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【2025年最新】飲食店を閉店する際の「原状回復」とは?費用負担を最小化するためのコツ

2025/10/10

飲食店を閉店するという決断は、どの事業者にとっても大変重いものです。それにも関わらず、閉店に伴う煩雑な手続きと予想を遥かに超える金銭的負担が現実としてさらに重くのしかかります。

その中でも一番大きい負担といっても過言ではないのが、「原状回復」にかかる費用。

「一体いくらかかるのか見当もつかない」
「契約書の内容をよく覚えていない」
「不当に高額な請求をされたらどうしよう」

このような不安は、閉店を決意したすべての経営者が抱える共通の悩みではないでしょうか。

本記事では、こうした不安を解消するために、原状回復の法的な定義から、その費用と2025年の最新の相場、そして高額なコストを利益に転換する可能性を秘めた“居抜き売却”まで網羅的に解説します。

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原状回復とは?飲食店退去時の義務と法的根拠

閉店コストの大部分を占めるのが「原状回復費用」。

この言葉がどういう意味なのか、飲食店が退去する際の義務や法的根拠にはどういうことがあるのかを、みていきましょう。

そもそも“原状回復”とは

原状回復とは、賃貸物件を退去する際に、借主(テナント)の責任によって生じた損傷や変更を修復し、「物件を借りた当初の状態に戻す」義務を指します。

ここで、間違わないようにしたいのが「新品の状態に戻す」という意味ではありません。

しかし、事業用物件である飲食店の場合、その解釈は居住用物件とは大きく異なり、より厳格な状態への復旧を求められるケースが一般的です。

なんで原状回復しなくてはいけないの?

原状回復義務は、貸主(オーナー)の資産である物件の価値を維持するために、賃貸借契約に基づいて借主側に課せられる法的な責任です。

事業活動、特に飲食店の場合では、内装の造作や厨房設備の設置など、物件に大きな変更を加えます。そのため、次のテナントがスムーズに事業活動をしやすいよう、あるいは物件の汎用性を確保するために、物件を借りた当初の状態に戻さなくてはいけません。

万が一、この原状回復義務を怠った場合、契約違反として敷金・保証金が返還されないだけでなく、追加で損害賠償を請求されるリスクもあります。

飲食店退去時の義務と法的根拠

飲食店は事業用物件なので、原状回復において最も重要なのが「賃貸借契約書」です。

居住用物件の場合、経年劣化や通常の使用による損耗(通常損耗)は貸主負担が原則です。しかし、事業用物件の契約では、「通常損耗を含め、借主の負担で原状回復を行う」といった特約が盛り込まれているケースがほとんどであり、その内容が法的に有効と判断される傾向が強いです。

また、特に注意すべきなのが「スケルトン返し」の条項で、内装や設備をすべて撤去し、建物の構造躯体(コンクリート打ちっ放し)の状態に戻すことが義務付けられています。

たとえ、物件を借りた際に「居抜き物件」だったとしても、賃貸借契約書にスケルトン返しが明記されていれば、スケルトン状態への解体費用を全額負担しなければならないケースがほとんどです。

そのため、あなたの飲食店の法的根拠と義務の範囲を正確に把握するためには、手元の賃貸借契約書を隅々まで確認することが不可欠です。

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飲食店の原状回復費用と最新相場【2025年】

原状回復のことを理解した次に直面するのが、「具体的にいくらかかるのか」という費用面での問題です。

飲食店の原状回復費用は、お店の立地、業態、規模、内装、厨房設備など複合的な要素によって変動します。ここでは最新の相場観と、費用を左右する具体的なポイントを解説します。

業態・店舗規模別の費用シミュレーション

飲食店の原状回復費用は、坪単価で計算されることが多く、その相場は坪あたり3万円〜10万円と非常に幅があります。

特に、ラーメン店や焼肉店など、厨房設備が大規模で油汚れが激しい「重飲食」業態の場合、坪単価10万円を超えることも珍しくありません。

あくまで目安となりますが、以下に業態と店舗規模別の費用シミュレーションをまとめました。

店舗規模軽飲食(カフェ・バー等)坪単価相場重飲食(ラーメン・焼肉等)坪単価相場
~30坪(小規模)2万円~6万円5万円~12万円
31~50坪(中規模)3万円~5万円4万円~10万円
51坪~(大規模)3万円~8万円5万円~15万円

厨房・ダクト・フロアなど、工事内容ごとのポイント

飲食店の原状回復費用は大掛かりな作業が多いため、どうしても高額になりがちです。

その中でも、特に飲食店特有の工事内容でコストが押し上げてしまう内訳を解説します。

原状回復工事の主な内訳

  • 内装・外装解体工事費:壁、天井、床、造作カウンターなどの内装・外装を解体・撤去する費用 。  

  • 設備撤去工事費:厨房機器、空調、給排気ダクトなどの設備を撤去する費用。  

  • 補修工事費:解体に伴い発生した躯体の傷などを修復する費用。  

  • 産業廃棄物処理費:解体で発生した廃材を法律に基づき処分する費用。

  • 諸経費:現場管理費や業者の利益など。工事費総額の10%〜20%が目安です。

飲食店特有の工事ポイントと費用増加要因

厨房

  • 重量厨房機器の撤去:業務用冷蔵庫やオーブン、フライヤーなどは大型かつ重量があるため、搬出には専門的な技術と重機が必要となり、どうしても人件費や車両費がかさみます。  

  • グリストラップの処理:油を分離・収集するグリストラップの清掃・撤去は、特殊な作業なため、追加費用が発生します。  

  • ガス・水道設備の処理:高出力なガス機器や複雑な給排水管の閉鎖・撤去は、安全管理上、専門業者による作業が必須です。

ダクト・排気設備

  • 天井裏に複雑に張り巡らされた排気ダクトの撤去は、高所作業となり、手間と時間がかかります 。特に、近隣への配慮が必要な場合は、作業時間や方法に制約が生まれるため、コストがかさみます。

フロア・壁・天井

  • 防水工事の撤去:厨房の床に施工された防水層を撤去し、コンクリートスラブの状態に戻す作業は、専門的な技術を要します。  
  • 油汚れ・臭気の除去:長年の営業で染み付いた壁や天井の頑固な油汚れや臭気の除去には、特殊な洗浄剤や工法が必要となり、クリーニング費用が高額になります。

これらの専門的な工事は、一般的なオフィスや小売店にはない飲食店特有のものです。見積もりを精査する際は、これらの項目がどのように計上されているかを確認することが重要です。

原状回復を回避・負担軽減できる「居抜き売却」png

これまで解説してきた通り、原状回復にかかる費用は数百万円という高額なコストがかかってしまいます。

しかし、この負債を利益に変えることができるのが「居抜き売却」です。内装や厨房設備を解体せず、そのままの状態で次のテナントに売却(造作譲渡)する手法なので、原状回復費用を不要にできるどころか、内装や設備を価値として売却し、利益を得られる可能性も。

ここでは、そんなメリットが多い「居抜き売却」について、みていきましょう。

居抜き売却の流れ

居抜き売却の流れ

居抜き売却は、法的なリスクや大きな金額が動くため、居抜き売却に特化した専門の業者に依頼することが鍵になってきます。そのため、しっかりとした事前準備と戦略的な手順を踏むことが不可欠です。

一般的に、居抜き売却の専門業者に依頼した場合の流れは以下のようになります。

①契約書・リース内容の確認:まずは賃貸借契約書を精査し、「原状回復義務の範囲」「解約予告期間」「造作譲渡の可否」を確認します。厨房機器などのリース契約が残っている場合は、その内容も必ず確認が必要です。  

②専門業者への相談:貸主へ解約を申し出る前に、居抜き売却を専門とする業者に相談します 。契約書の確認から貸主との交渉、売却価格の査定まで、専門家による客観的な意見をもらいましょう。

③貸主からの承諾獲得:専門家のサポートのもと、貸主と交渉し、「造作譲渡の承諾」を得ます。これが最も重要であり、この承諾なくして居抜き売却をすることは不可能です。(賃貸借契約書に「造作譲渡の許可」がなくても、交渉次第では許可が降りるケースは多い)  

④買主の募集と内見:専門業者が持つ幅広いネットワークを駆使し、買主候補を探します。候補者が見つかれば、営業に支障が出ないよう配慮しながら内見を実施します。  

⑤条件交渉と契約締結:買主候補と造作譲渡価格や引き渡し条件を交渉します。合意にいたれば、まず売主と買主間で「造作譲渡契約」を締結。その後、貸主と買主が新たな「賃貸借契約」を結びます 。  

⑥引き渡しと決済:すべての契約が完了後、定められた日時に店舗の鍵や関係書類を買主に引き渡し、取引は完了します。造作譲渡代金の決済も、契約内容に沿って行われます。

居抜き売却のメリット

原状回復による閉店と比較した場合、居抜き売却の金銭的メリットは圧倒的です。

数百万円がかかる可能性のある原状回復工事費用が不要になるだけでなく、本来は解体しなくてはいけない内装や設備を資産として売却し、さらに「造作譲渡料」という収益を得られる可能性もあります。

工事期間中に発生する「空家賃」の負担も、引き渡し直前まで営業を続けることで最小限に抑えられます。

店舗売却ドットコムが手掛けた中野区のラーメン店の事例では、通常通り原状回復で閉店した場合、360万円の支出が発生する計算でしたが、居抜き売却を選択したことで最終的に410万円が手元に残り、その差額は実に770万円にも上りました。

居抜き売却ができる店舗の条件

そんな魅力的な居抜き売却ですが、残念ながらすべての店舗が簡単に居抜き売却できるわけではありません。

もしくは、買い手が見つかったとしても、原状回復費用は不要になったが、内装・設備の状態が悪く、造作譲渡の売却額はいくらにもならなかったというケースもあります。

そのため、自店と以下の項目を照らし合わせ、「自店は居抜き売却できそうな物件・条件なのか」を確認してみましょう。

  • 貸主の承諾が得られるか:これは絶対条件です。契約書で禁止されていても交渉の余地はありますが、貸主の理解なくしては進められません。  

  • 店舗の状態が良いこと:清潔に保たれ、設備が正常に機能している店舗は、買主にとって魅力的です。日々の清掃やメンテナンスが査定額に直結します。  

  • 汎用性のある業態・設備:特殊すぎる内装や専門性の高すぎる業態は、買主が限定される可能性があります。  

  • 良好な立地条件:駅からの距離や周辺環境など、立地の良さは買主を見つけるうえで、非常に有利な要素となります。

居抜き売却の会社へ依頼する際の注意点と成功事例

居抜き売却の成否は、立地、内装・設備の状態にもよりますが、パートナーとなる専門業者選びも非常に重要です。

業者を選定する際は、以下の点に注意して探すようにしましょう。

  • 実績の確認:自店の業態やエリアでの売却実績が豊富か、具体的な事例を提示できるかを確認します。  

  • 対応エリア:自店舗の所在地がサービスの対象エリア内かを確認。  

  • 査定の透明性:査定額の根拠を明確に説明してくれるか、手数料体系は明瞭かを確認します。  

店舗売却ドットコムは一都三県が対象とはなりますが、これまで1,600件以上の飲食店の売却サポート実績があります。飲食店の店舗売却に特化しており、専門スタッフが幅広いネットワークを駆使し、ご相談いただいた方、一人ひとりに丁寧な対応を心がけています。

店舗売却ドットコムに相談

閉店プロセスでは、予期せぬトラブルが発生しがちです。ここでは、店舗売却ドットコムでよくある質問をQ&A形式で回答します。

貸主から高額な原状回復請求を受けた場合はどうすればいい?

市場相場をあきらかに超える見積もりを提示された場合、まずは感情的にならず、冷静に対処することが重要です。

  • 詳細な見積書の要求:「工事一式」といった曖昧な項目ではなく、工事内容、単価、数量が明記された詳細な見積書の提出を求めましょう。  

  • 相見積もりの取得:貸主指定の業者がいる場合でも、複数の独立した業者から同条件で見積もり(相見積もり)を取得してみましょう。これが価格の妥当性を示す客観的な証拠となります。

  • 証拠に基づく交渉:相見積もりを元に、貸主や指定業者と具体的な価格交渉を行います 。契約書で定められた義務の範囲を超えた工事が含まれていないか、専門家とともに厳しくチェックしましょう。  

  • 専門家への相談:交渉が難航する場合は、一人で抱え込まず、消費生活センターや弁護士などの第三者機関に相談することを検討しましょう。

通常損耗と原状回復の違いは?

2020年4月に施行された改正民法により、時間の経過とともに自然に発生する劣化や、通常の使用で生じる損耗(通常損耗)は、原状回復義務に含まれないと明文化されました。ただし、これは主に居住用物件の考え方です。

飲食店などの事業用物件では、賃貸借契約書に「通常損耗を含めて借主が原状回復義務を負う」という特約が記載されている場合、その特約が優先されるのが一般的です。

そのため、まずは賃貸借契約書に書かれている内容、特に特約の部分を明確に把握しましょう。

解体時の廃棄物処理は自社で行っても良い?

結論から言うと、法律上は自社での処理も可能ですが、事業者が排出した「事業系ごみ」には極めて重い法的責任が伴うため、許可を持つ専門業者への委託が最も安全かつ現実的です。

まず、「事業系ごみ」とは、飲食店などの事業活動によって生じた廃棄物全般を指します。これは家庭ごみとは全く異なり、廃棄物処理法に基づき、排出した事業者自身の責任で適正に処理することが義務付けられています。

そのため、ご自身である程度の事業ゴミを処理する場合は、事業位系一般廃棄物や産業廃棄物の収集運搬業の許可を取得している業者に依頼しましょう。

飲食店を閉店する際の原状回復について解説しました。

原状回復は費用が高額になるうえに、工事期間や契約中の空き期間にも家賃が発生してしまい、閉店コストが想像以上に膨れ上がってしまうことがほとんどです。

もし、貸主から造作譲渡の許可が降りた場合、「居抜き売却」を検討してみてはいかがでしょうか。

店舗売却ドットコムでサポートした多くの方から、「原状回復費用を不要にして、尚且つ自分の店を売却することで利益が出るなんて知らなかった」という喜びの声をいただいております。

「閉店するか検討中」という段階の方でも、無料相談を受け付けていますので、お気軽にご相談ください。飲食店の居抜き売却に特化した専門家があなたのお悩みを一緒になってサポートいたします。

「店舗売却ドットコム」では、1,600件を超える飲食店の売却支援実績があります。
株式・事業譲渡だけでなく、「店舗・居抜き売却」を検討している方も、お気軽にご相談ください。

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株式会社Food Innovators Japan 取締役 今井康仁

監修者:今井 康仁(株式会社Food Innovators Japan 取締役)


飲食業界に20年以上携わり、現在はFood Innovators Japanで店舗売却支援や開業サポート、経営改善などに取り組んでいます。現場経験をもとに、事業者の皆さまに役立つ情報をお届けします。