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2025/06/03
飲食店の閉店や売却を検討している方の中には、「事業譲渡という選択肢も気になる」という方も多いのではないでしょうか。
とはいえ、実際には「事業譲渡とは何か?」「手続きはどう進めればいいのか?」といった具体的な内容まで正しく理解している人はそれほど多くありません。
本記事では、飲食店の事業譲渡に関する基礎知識から、手順、必要書類、料金、注意点までを徹底解説していくので、ぜひ最後までご覧ください。
飲食店の事業譲渡とは、店舗の内装や設備だけでなく、顧客基盤・ブランド・ノウハウなど「店舗の営業そのもの」を第三者に引き継ぐことを指します。
簡単に言えば、飲食店を丸ごと他の人にバトンタッチする手続きです。
通常、飲食店の閉店時には店舗の原状回復や設備処分などを行いますが、そこからは何の利益も生まれません。
一方、事業譲渡であれば、これまで築いてきた資産や信用を価値として売却できる可能性があります。
また、事業譲渡とは別の飲食店の売却方法を知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
飲食店の廃業・閉店を考えるとき、思い浮かぶのは「そのまま店を閉める」「居抜き売却」という選択肢かもしれません。
しかし、もし資産価値や地域の人気がある店舗であれば、「事業譲渡」を選ぶことで、大きなメリットを得られる可能性があります。
ここでは、飲食店の事業譲渡のメリットを5つに分けて解説します。
廃業した場合、手元に資金を残すことが出来る場合もありますが、契約状況によっては内装の撤去費用や原状回復のための追加の出費まで発生することも。
一方で、事業譲渡であれば、以下のような資産を「価値あるもの」として第三者に売却できます。
特に黒字経営で安定した集客力がある店舗は、数百万円~数千万円の譲渡益を得られる可能性もあります。
通常の閉店では、以下のような準備が必要になります。
しかし、事業譲渡であれば営業中の状態でそのまま新しいオーナーに引き継ぐことが可能です。
そのため、閉店・廃業に伴う、店舗の原状回復のような全リセットがないので、時間や費用を大幅に節約できます。
買い手にとって、ゼロから飲食店を開くには内装工事・厨房機器の導入・人材採用・集客など、膨大な初期投資と労力が必要です。
そのため、以下のような店舗の状態だと売却交渉時の大きな価値評価ポイントにもなります。
飲食店にとって、店舗が「どこにあるか」「どんな店か」というのは、「命」そのものです。
特に、人気エリアや駅近といった好立地は、そもそも空き物件が出にくいので、買い手にとって、現在の店舗をそのまま引き継ぐことができるのは大きなメリットになります。
さらに、店舗名やメニュー、内装の雰囲気を引き継いでもらえば、自分が作り上げてきたブランドを続けてもらうことが出来ます。
飲食店の閉店するにあたり、最後まで悩むのが「スタッフの処遇」です。
「もし急にお店を閉めたら、スタッフたちに迷惑をかけてしまう」と不安を抱えるオーナーも多いと思います。
しかし、事業譲渡をうまく活用すれば、現在の従業員をそのまま新オーナーに引き継ぐ形で雇用継続ができるケースが多くあります。
ただし、双方合意の上で買い手と従業員が新たに雇用契約を結ぶ必要があるので注意しましょう。
特に、信頼関係を築いてきた店長や料理長などのキーマンが残れば、店舗の味や接客の質が保たれるため、買い手にとっても大きなメリットとなります。
事業譲渡には多くのメリットがある一方で、慎重に進めなければ後々のトラブルにつながるリスクもあります。
ここでは、飲食店オーナーが事前に理解しておくべきデメリットを5つ紹介します。
事業譲渡でもっとも多いのが、契約書の不備や曖昧な取り決めによるトラブルです。
そのため、取引の際には必ず以下のような要素を明確にしておくことが重要です。
口約束や曖昧な契約は、譲渡後の「言った・言わない」の争いにつながるので、知人同士のやり取りであっても、必ず書面で契約を交わしましょう。
個人で法務面の整備を進めるのは難しいので、飲食店の譲渡を熟知した専門の会社のサポートを活用するのが安心です。
買い手にとって、隠れた負債などの「見えないリスクの存在」は大きな不安要素です。
一例を挙げるので、買い手と交渉する際に申告漏れがないよう、以下のような点を注意しましょう。
こうした問題が後から発覚すると、買い手との関係悪化を招き、損害賠償や契約の無効などに発展する可能性もあります。
そうならないためにも、「デューデリジェンス(DD)」と呼ばれる、専門家に事前調査を委託することが重要です。
デューデリジェンス(DD)とは、飲食店の事業譲渡において、買い手が売り手の財務・法務・契約状況などを専門家とともに調査・分析するプロセス。リスクを事前に把握し、安全な取引を実現するために欠かせない工程です。
譲渡前に、オーナー側で現在の債務や契約内容を明確に整理しておく必要があります。
例えば次のような契約関係を放置すると、譲渡後のトラブルの原因になることも。
これらの契約は、譲渡に伴って「名義変更」や「解約・再契約」が必要になる場合もあるので、未払いの請求書なども残っていないか念入りに確認しましょう。
店名やメニューをそのまま引き継いでも、運営者が変わることで顧客の評価が変わってしまう可能性があります。
評価の低下リスクを防ぐためにも、スタッフ、レシピ、接客マニュアルなど、以前の状態を維持できるよう、しっかり引き継ぎをしましょう。
「名前だけでなく“本質”も引き継ぐ」意識が重要です。
いきなり「店舗を売却する」というと、多くのお客様や従業員にネガティブな印象を持たせてしまいます。
そのため、以下のようになるべく不安にさせない説明をしましょう。
事業譲渡(オーナー交代)は「終わり」ではなく「新たなスタート」です。
その意図を正しく伝えることで、お客様やスタッフとの信頼関係を維持したまま、スムーズな引き継ぎと信頼維持につながります。
事業譲渡は「お店を売る」だけの行為ではありません。
店舗の資産や契約関係、スタッフ、顧客、さらには長年かけて築いてきた信頼まで含めて、次の経営者へ丁寧に引き継ぐ必要があります。
ここでは、飲食店が事業譲渡をスムーズに進めるための4つのステップをわかりやすく解説します。
まずは、自店の状況を正しく整理(洗い出し)するところからスタートです。
ここでの事前準備が不十分だと、交渉が難航したり、最終的に契約が成立しないこともあるため、この段階から専門家に相談することも有効的です。
譲渡先、つまり「誰に引き継いでもらうか」を探す段階です。
譲渡先を探す方法は、主に3つの方法が挙げられます。
店舗の状況によっては、事業譲渡よりも別の売却方法が適していることもあるので、まずは信頼できる業者に相談するのがおすすめです。
候補者と交渉が進んだら、まずは条件面での基本合意を締結します。
その次におこなうのが「デューデリジェンス(事前調査)」なので、どのような内容を合意して、チェックするのかを見ていきましょう。
この調査段階で問題が見つかると、条件の見直しや契約中止に至る可能性もあるため、売り手側は正確な情報提供をしましょう。
デューデリジェンスを経て、最終的な条件が固まったら、いよいよ譲渡契約の締結と引渡しです。
最終契約書で明文化すべき主な項目をまとめました。
また、実際の引渡しに際しては、取引先やスタッフへの引き継ぎ説明、 鍵、レジシステムなどの移管も必要です。
今までの引渡しの際には、売り手側も保健所へ営業許可名義変更をしに行く必要がありましたが、2023年(令和5年)12月の制度改正により、ある条件を満たせば名義変更による承継が可能になりました。
これまで、事業譲渡を行う場合は、新しいオーナーが一から営業許可を取り直す必要があり、引き継ぎのタイミングによっては営業の空白期間が生まれるリスクがありました。
しかし現在は、以下の条件を満たせば、同一の施設を使用する場合に限り、営業許可の「名義変更」が可能になる可能性もあります。
名義変更が認められる条件(一部抜粋)
引用先:東京都保健医療局
なお、実際の運用は自治体によって若干異なる場合があるため、事前に各保健所へ確認することをおすすめします。
飲食店の事業譲渡をスムーズに進めるためには、あらかじめ必要書類を準備しておく必要があります。
事業譲渡を正式に行う際には、契約書類の準備が不可欠です。
契約書類は曖昧なまま進めると後々のトラブルになりかねないので、専門家と一緒に内容を確認・整備しておくことをおすすめします。
契約締結や手続きの際には、本人確認や法的手続きを進めるための書類も必要なので、以下の表にまとめました。
飲食店の事業譲渡で必要な書類一覧(売り手・買い手別)
書類名 | 書類名 | 買い手側 |
本人確認書類(運転免許証など) | ◯ | ◯ |
会社登記簿謄本 (法人の場合) | ◯ | ◯ |
営業許可証の写し | ◯ | ー |
財務諸表 (直近の損益・貸借) | ◯ | ー |
リース契約書・業務委託契約書のコピー | ◯ | ー |
従業員名簿 (雇用継続がある場合) | ◯ | ー |
資金証明書 (預金残高証明など) | ー | ◯ |
これらは、契約の信頼性を担保するための基本情報として扱われますので、できるだけ正確かつ最新のものを準備しましょう。
譲渡後の営業継続にあたっては、行政への申請・届出が必要になるケースがあるので、一例を紹介します。
自治体や業態によって提出書類が異なる場合があるため、事前に所轄の保健所・税務署・消防署等へ確認しておくと安心です。
事業譲渡をするにあたり、ここまで情報量が多いと「一人で手続きするのが不安になった」という方もいると思います。
そんな場合でもご安心ください。
店舗売却ドットコムでは、これまで1600店舗以上の飲食店の店舗売却をしてきた実績を活かしたサポートができるので、少しでも不安な方はぜひ無料相談してください。
事業譲渡にかかる費用は、譲渡金額やサポート内容によって大きく異なります。
特に、仲介会社を利用する場合は「成功報酬型」の料金体系が主流なので、飲食店が事業譲渡を進める際に発生しやすい代表的な費用項目と、おおよその相場感を紹介します。
費用項目 | 主な負担者 | 内容 | 相場感 |
---|---|---|---|
仲介手数料(成功報酬) | 売り手 | 成約時にM&A仲介会社へ支払う成果報酬。取引金額に応じて料率が変わる「レーマン方式」が主流 | 譲渡価額の3~10% ※ただし、最低報酬額(100万円以上)が設定されている場合が多く、小規模な取引では特に注意が必要 |
着手金 | 売り手 | M&A仲介会社との契約時に支払う初期費用。案件化や資料作成などの実費に充てられる | 0円 ~ 200万円 ※近年は着手金無料の「完全成功報酬制」を採用する仲介会社が増加している |
譲渡契約書の作成・チェック費用 | 売り手・買い手 | 弁護士などの専門家が契約書を作成・レビューする費用。法的なリスクを回避するために必須となる | 10万円 ~ 50万円以上 ※取引の規模や契約内容の複雑さによって大きく変動する |
デューデリジェンス費用 | 買い手 | 買い手が売り手企業の財務・法務状況などを精査する「買収監査」の費用。リスクの洗い出しに不可欠 | 30万円 ~ 数百万円 ※調査範囲を財務・法務などに限定した簡易調査なら数十万円から可能だが、本格的な調査は高額になる |
実際に飲食店の事業譲渡を行う際の総費用は、店舗規模や譲渡金額にもよりますが、どんなに少なくても100万円以上はかかります。
この費用感だけ見ると「仲介会社に依頼すると高いのでは?」と感じる方もいると思います。
しかし、契約交渉・買い手選定・契約書作成・リスク回避まで一括でサポートしてくれると考えれば、合理的な費用とも言えます。
とくに初めて事業譲渡に臨むオーナーにとっては、プロを介して進めることで、時間・リスク・ストレスなどの削減という面でも、十分に価値のある投資と言えます。
事業譲渡は、飲食店を次のオーナーに引き継ぐ大切なプロセスです。
しかし、手続きや契約内容を甘く見て進めると、後々大きなトラブルに発展することもあるので、特に注意すべき5つのポイントを解説します。
もっとも重要なのは、「契約書の内容を明確にすること」です。
曖昧な表現や口頭での取り決めはトラブルのもとになるので、以下の点を明文化しましょう。
このような内容は、すべて書面で残しておきましょう。
飲食店営業許可やテナント契約、リース契約など、多くの契約や許認可には名義変更の手続きが必要です。
特に2023年12月の制度改正により、一定条件下で営業許可の名義変更が可能になりました。
とはいえ、自治体によって運用が異なるため、事前に管轄の保健所へ確認することが重要です。
厨房設備のリース契約やPOSシステムなども、譲渡時に契約変更または再契約が必要な場合があるので確認しておきましょう。
事業譲渡によって利益が出た場合には、税金が発生する可能性があり、個人事業主と法人の場合で異なります。
また、契約書には収入印紙が必要になることがあり、契約金額に応じた印紙税(1,000円〜数万円)が発生します。
後から「こんなに税金がかかると思わなかった」とならないよう、事前に税理士へ相談することをおすすめします。
店舗の譲渡は、従業員や常連客にとっても大きな変化なので、店舗に関わる人すべてにネガティブな印象をあたえないような配慮が必要です。
例えば、従業員には早めに情報を共有し、雇用の継続や労働条件について丁寧に説明しましょう。
顧客には「営業は続きます」といったポジティブなメッセージを発信し、引き続きご利用いただけるような環境を整えておきます。
そして、「突然のオーナー交代」ではなく、「前向きなバトンタッチ」として受け入れてもらえるよう、誠意ある説明を心がけましょう。
事業譲渡には、法務・税務・契約・行政手続きなど、専門的な知識が求められます。
「費用を抑えたいから」「自分でなんとかできそう」と自己流で進めると、想像以上のリスクが潜んでいることも。
トラブルを未然に防ぐためにも、信頼できる専門家や仲介会社に相談することが、結果的に時間も費用も抑える近道になることがあります。
「自分の店の手続きはどう進めればいいんだろう?」という段階でも大丈夫ですので、お気軽に無料相談してください。
飲食店を手放す際、「廃業してゼロにする」か、「誰かに引き継いでもらって価値に変える」か。
この選択は、お店の未来だけでなく、オーナーご自身の人生にも大きな影響を与えます。
この記事では、以下のポイントについて解説してきました。
事業譲渡は売却方法の一つではありますが、単なるお店の売却ではありません。
これまで築き上げてきた設備・従業員・顧客・ブランドなど、さまざまな思い入れがある店舗を、次のオーナーへと引き継ぐ重要なプロセスです。
だからこそ、正しい知識と手順、そして信頼できるサポート体制が必要になります。
「売るかどうかまだ迷っている」
「自分の店舗が事業譲渡の対象になるのか知りたい」
「まずは話だけでも聞いてみたい」
そんな方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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