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2025/06/04
飲食店の売却を検討している方の中には、「株式譲渡(法人譲渡)」を考えている方もいると思います。
しかし、実際には「そもそも株式譲渡とは何か?」「事業譲渡とどう違うのか?」など、仕組みやメリットを正しく理解している人は少ないのが現状です。
本記事では、飲食店の株式譲渡の説明から、事業譲渡との違い、メリット・デメリット、株式譲渡を選ぶべきケース、業者選びのポイントまで解説していきます。
株式譲渡とは、法人が発行する株式を第三者に売却し、会社の所有権を移転する手続きのことです。
飲食店を法人で経営している場合、株式譲渡により、店舗、契約、従業員、営業許可、資産などをそのまま新しいオーナーへ引き継ぐことが可能となります。
店舗のブランドを維持しながら経営者を変える手段として有効であり、M&Aの一種として近年注目されています。
手続きは比較的シンプルですが、会社の過去の債務やトラブルも引き継ぐ点には注意が必要です。
事業譲渡とは、法人が有する事業の一部または全部を、個別に取り決めたうえで第三者に売却する方法です。
株式譲渡との違いは、会社そのものではなく、設備、ノウハウ、人材、顧客基盤など、選定された資産や契約のみが対象となります。
一般的に飲食店の売却では、引き継ぎのスピードや従業員・顧客の安心感を重視するなら「株式譲渡」、不要な部分を除外して譲渡したい場合は「事業譲渡」が向いています。
以下に、株式譲渡と事業譲渡の違いをまとめたので参考にしてください。
項目 | 株式譲渡 | 事業譲渡 |
譲渡対象 | 法人(株式) | 事業の一部または全部 |
税金(消費税) | 非課税 | 課税対象資産に消費税 |
税金(譲渡益・売り手個人株主) | 譲渡所得に対し約 20.315%(分離課税) | 会社が受領した譲渡益に法人税。その後株主への配当等で追加課税の可能性あり |
契約・許可 | そのまま引き継げる(契約内容や許認可の種類により届出・承認が必要な場合あり) | 再契約・再取得が必要 |
手続きの簡便さ | 株主変更のみで済む | 多数の契約・許可変更が発生 |
リスク | 債務・訴訟も含めて引き継ぐ | リスクを切り分けることが可能 |
事業譲渡について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
株式譲渡には「会社の所有権をそのまま引き継げる」といったメリットがある一方で、「過去の債務やトラブルも一緒に背負う可能性がある」といったデメリットもあります。
ここでは、飲食店の株式譲渡を検討する際に知っておきたい主なメリットとデメリットを詳しく解説します。
株式譲渡のメリットについて3つ解説します。
法人自体は変更せずに「所有権(株主)だけを移す」ため、営業許可や契約内容などを大きく変更する必要がありません。
そのため、譲渡後も飲食店のオペレーション(店舗営業)を止めずに継続でき、ゼロから新規開業するよりもスムーズに運営を引き継げます。
営業許可、酒類販売免許、リース契約、従業員の雇用契約などを、そのまま引き継ぐことが可能です。
面倒な再契約や申請手続きの手間を省けるため、営業の中断リスクを避けられます。
法人としての営業実績、資産、信用などが「企業価値」として評価されやすいため、単なる設備譲渡よりも高値での売却が期待できます。
特に黒字経営や安定した顧客基盤がある場合は、M&A市場での競争力が高まります。
次は、株式譲渡のデメリットについて3つ解説します。
法人そのものが存続するため、過去の借入金、税金の未納、訴訟リスクなどもすべて引き継ぐことになります。
特に注意!
帳簿上では確認できない債務や未解決の表面化していないトラブルが隠れていることもあるため、事前の入念な確認が不可欠です。
デューデリジェンスとは、M&Aや投資、事業売却の際に、「対象となる企業や事業の価値・リスクを事前に調査するプロセス」です。
買い手は、財務・税務・法務の3つの観点から、専門家によるデューデリジェンスを実施する必要があります。
これを怠ると、買収後に思わぬ損失やトラブルが発覚し、事業継続に支障をきたす恐れがあります。
売り手は、株主構成、定款、各種契約書、財務諸表などの書類を、事前に整理しておく必要があります。
これらの準備が不十分だと、買い手の信用を信用を失い、交渉の進行を妨げる要因になります。
株式譲渡は、表面的にはスムーズな手続きに見える一方で、法的・税務的なリスクが多く潜んでいます。
特に飲食店では、業種特有の許認可や従業員契約なども関係するため、専門的な知見が欠かせません。
飲食店M&Aに特化した専門業者やM&Aプラットフォームに早期相談することで、トラブルを未然に防ぎ、有利な条件での譲渡が可能になります。
また、株式譲渡の他に、店舗売却や事業譲渡といった売却方法もあるので、詳しく知りたい方はお気軽にお問い合わせください。
飲食店で「株式譲渡をしたい」と考えていても、店舗状況によっては、株式譲渡とは別の売却方法が適しているケースもあります。
詳しくみていきましょう。
長年の営業実績がある飲食店では、法人そのものにブランド価値(実績、知名度、地域の顧客からの信頼など)の信用が蓄積されています。
株式譲渡の場合、こうしたブランドや信用をそのまま新たな経営者へと引き継げるため、「企業価値を損なわずに売却したい」という場合に最適です。
店舗スタッフの雇用を維持したり、既存の仕入れ業者・業務委託先との取引を継続したい場合、株式譲渡が有効です。
法人そのものは変わらないため、契約や雇用関係に大きな変更が生じず、事業の連続性を確保できます。
複数の飲食店舗を運営していたり、フランチャイズ契約下で営業している法人では、一つひとつの店舗ごとに契約を再締結するのは煩雑なため、手間やリスクが大きいです。
株式譲渡であれば、法人単位で包括的に譲渡できるため、管理コストや法務リスクを大幅に削減できます。
特に、スケールメリットを重視する企業同士のM&Aでは、一般的な譲渡手法です。
飲食店の株式譲渡を成功させるには、適切なM&A業者の選定が欠かせません。
ここでは、株式譲渡をスムーズかつ有利に進めるために確認すべきポイントを4つにまとめました。
M&A業者を選ぶ際は、「飲食業界にどれだけ精通しているか」、そして実際に「飲食店の株式譲渡や事業譲渡を成功させた実績が豊富か」を確認しましょう。
理由としては、飲食店のM&Aには、一般的な企業売却とは異なる特有の知識と経験が求められます。
特に東京23区のような都市部では、駅近の物件や商業ビル内の店舗、フランチャイズ展開中の事例など、地域や立地に応じたノウハウが必要になるので、以下の点を面談時に確認するのがおすすめです。
確認しておきたいポイント
飲食店の譲渡相場(売却価格)は、立地・業態・売上・設備状態など多くの要素によって変動します。
そのため、過去の譲渡相場や交渉の事例に詳しい業者であれば、適正な売却価格の設定や交渉戦略の提案が可能です。
業者が地域別・業種別などの相場データを保有しているかどうかは、失敗しない価格設定の鍵となります。
株式譲渡では、店舗の設備やスタッフだけでなく、会社そのもの(法人格)を引き継ぐため、法務・財務・税務の確認が必須となります。
契約書の作成、登記手続き、買い手との条件交渉など、各プロセスを個別に外部に依頼するのは手間とコストがかかるため、ワンストップでサポートできる体制を持つ業者が理想です。
そのため、社内に弁護士や税理士、公認会計士などの専門家ネットワークがあるかどうかも確認しましょう。
M&A業者を選ぶ際に見落としがちなのが、「報酬体系の分かりやすさ」です。
飲食店の株式譲渡では、着手金や成功報酬の金額・タイミングが業者によって大きく異なるので、「どの費用が・いつ・いくら発生するのか」を明確にしましょう。
以下はM&A支援でよくある料金体系の種類と相場感をまとめました。
着手金は、準備活動に対する初期費用で、最近の飲食店のM&Aでは「着手金無料」の仲介会社が主流になってきています。
もし着手金を請求された場合は、M&Aが不成立に終わっても返金されないので、費用対効果はあるのかを見極めましょう。
月額報酬は、契約期間中に毎月発生する顧問料ですが、現在の飲食店のM&Aにおいては、この料金を設定している仲介会社は少ない傾向にあります。
交渉が長期化すると負担が大きくなるため、特に理由がない限りは月額報酬のない料金体系の会社を選ぶのをおすすめします。
成功報酬は、成立時に発生する成果報酬で、「レーマン方式」で計算されるのが一般的です。
「株式価値基準」「負債を含む基準」などによって計算方法が異なるので、必ず計算基準を確認ししましょう。
最低報酬は、成功報酬に設けられた最低保証金額で、売却金額が小さい案件では、最低報酬額(例:350万円)を定めている業者もあります。
飲食店など比較的規模が小さい株式譲渡では特に注意が必要です。
完全成功報酬制は、M&Aが成立するまで一切費用が発生しないため、売り手にとってリスクが低い魅力的な選択肢です。
ただし、仲介会社側も成功しないと収益にならないため、「成約しやすい案件」が優先され、交渉に手間がかかる案件は後回しにされる可能性もあります。
飲食店の売却方法には、株式譲渡のほかにも「事業譲渡」や「店舗(居抜き)売却」といった選択肢があります。
特に、小規模店舗や法人化していない店舗では、店舗売却のほうがスムーズかつ手続きが少ない場合もあります。
そのため、まずは「どの売却方法が自店舗に最適か」を専門家に相談しながら判断するのが得策です。
飲食店の売却方法の一つ、「株式譲渡(法人譲渡)」についてまとめてきました。
株式譲渡は法人が発行する株式を第三者に売却し、会社の所有権を移転する手続きのことで、複数店舗を展開している法人に向いている売却方法です。
本記事では、特に株式譲渡におけるメリット・デメリットについて解説しました。
株式譲渡のメリット | 株式譲渡のデメリット |
手続きが簡単でスムーズ | 過去の借金やトラブルも引き継ぐ可能性 |
契約・許認可をそのまま使える | 会社の中身をしっかり調べる「デューデリジェンス」が必要 |
譲渡価格を高く設定しやすい | 事前準備として社内に整理すべき情報が多い |
その他にも、飲食店で株式譲渡を選ぶべきケースやポイントについても紹介しましたが、店舗状況によっては、株式譲渡以外の方法の方が適している場合もあります。
自社に合った最適な方法を見つけるためにも、まずは専門家への無料相談から始めることをおすすめします。
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