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投稿日:2025/11/27

飲食店の開業・移転において、初期投資を大幅に抑えられる「居抜き物件」は非常に魅力的な選択肢です。
一方で、契約や設備の確認が不十分だと、困難なトラブルに巻き込まれてしまうことも。
本記事では、居抜き物件の基本とメリットに加え、実務で起こりやすい居抜き物件のトラブル例、契約書チェックのポイント、トラブル発生時の考え方までを整理しながら解説していきます。

居抜き物件には数多くのメリットもありますが、隠れたリスクも存在します。
ここでは、居抜き物件の基本的な仕組みから、メリットと裏側に潜むリスクを見ていきましょう。
居抜き物件の取引は、物件の所有者である「貸主(大家)」、店舗を売却する「売主(旧賃借人)」、そして新たに店舗を契約する「買主(新賃借人)」の三者間で成立します。
基本的な流れとして、まず売主と買主が店舗の内装・設備(造作)の売買に合意し、「造作譲渡契約」を締結します。
その後、買主は貸主と新たに「賃貸借契約」を結び、物件の賃借権と店舗の運営に必要な造作の両方を引き継ぎます。
この取引で重要なのが、「貸主の承諾が取れない限り、居抜き譲渡が成立しない」という点です。
この三者間の権利関係や合意形成が複雑に絡み合うため、専門的な知見が不可欠となります。
居抜き物件が多くの飲食店経営者に選ばれる最大の理由は、その経済的・時間的メリットにあります。
これらのメリットは、特にスピード感が求められる現代のビジネス環境において、非常に重要になってきます。
前述で居抜き売却の主なメリットを解説しましたが、知識が不足したまま安易に売買を進めると、以下のような深刻なトラブルに発展することも。
これらのリスクは、買主だけでなく、店舗を売却する側にとっても無関係ではありません。
引き渡し後のクレームにより、売却代金以上の損害賠償を請求されるケースすら存在するので、トラブルに巻き込まれないためにも、次の章で具体的な事例と対策を詳しく解説します。

居抜き物件の取引で発生するトラブルは、いくつかの典型的なパターンに分類できます。
ここでは、特に発生頻度が高く、かつ金銭的損害に直結しやすい5つのトラブルについて、その具体的な注意点と専門的な対策を見ていきましょう。
引き渡し前には正常に作動していたはずの業務用冷蔵庫などの電化製品が、営業開始直後に故障する。
これは、居抜きトラブルの典型例で、内見時には問題なく見えても、内部のコンプレッサーやモーターが寿命寸前というケースは少なくありません。
空調、給排気ダクト、製氷機、冷凍冷蔵庫といった大型かつ高額な設備は、故障時の修理・交換費用や営業機会の損失が甚大なため、細心の注意が必要です。これは民法上の「契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)」に関わる重大な問題です。
このトラブルを回避する鍵は、事前の確認と契約によるリスクヘッジです。
居抜き取引でもっとも複雑なのが、この「原状回復」をめぐるトラブルです。
売主は「すべて残して売りたい」、買主は「一部は撤去してほしい」、そして物件オーナーである貸主は「賃貸借契約書に基づき、ここまで戻してほしい」と、三者の要求が食い違うことが頻発します。
貸主から内装残置の正式な承諾を得ていないまま、売主と買主だけで話を進め、契約の最終段階で「その内装は認められない」と覆されてしまうケースも。
貸主の意思を早めに明確にした上で、契約書を確認することが重要です。
目に見える設備だけでなく、目に見えない「権利と義務」の引き継ぎもトラブルの温床です。
売主の所有物だと思い込んでいた厨房機器やレジシステムが実はリース契約品で、引き渡し後にリース会社から買主へ残債の請求が来るケースがあります。
他にも、光熱費や通信費の未払いや名義変更忘れにより、新オーナーが旧オーナーの滞納分を請求されることも。
契約関係の徹底的な洗い出しと精算の証明が不可欠です。
内装がきれいでも、目に見えない部分の問題がクレーム化することがあります。
長年、壁やダクトの内部に蓄積された油汚れが染み込んでいたり、排水管やグリストラップの清掃不備が原因で悪臭や害虫が発生する可能性もあります。
プロによる清掃と、引き渡し時の共同確認が最も有効です。
造作譲渡契約の合意が目前になった段階で、買主が一方的に「やはりやめたい」と撤退したり、売主が貸主へ解約予告を提出し、原状回復工事の準備を進めた後で、買主から契約解除を申し出されるケースが稀にあります。
このようなケースで、契約書での手付金の取り扱いや違約金の条件が曖昧な場合、こうした一方的なキャンセルによる損害を相手方に請求することが難しくなります。
このようになると、売主は売却益を得られないばかりか、高額なスケルトン工事費用を負担しなければなりません。
このように、居抜き物件での売取引を飲食店オーナーが個人で完璧にこなすのは現実的には難しく、
「どこまで確認すれば安心なのか」
「この契約条文で本当に問題ないのか」
と不安を抱える方も少なくありません。
居抜き物件トラブルを最小限に抑えたい場合は、店舗売却や居抜き譲渡を専門領域としている仲介会社に早めに相談しておくと安心です。

居抜き物件の売却を成功させるためには、抜け漏れのない事前準備をすることが不可欠です。
これまで解説してきたトラブルを未然に防ぐために、以下のチェックリストを参考にしてください。
| チェック項目 | 確認内容・アクション |
| 付帯設備表の作成 | 譲渡対象の全設備の「メーカー/型番/年式/動作状況/所有権(自己orリース)」を明記したリストを作成する。 |
| 専門家による動作確認 | 主要な厨房設備(空調、冷蔵庫、給排気等)について、専門業者による点検を実施し、報告書を取得する。 |
| 証拠の記録 | 全ての譲渡対象設備について、正常に動作している状態の動画と、複数アングルからの写真を撮影・保管する。 |
| 賃貸借契約書の再確認 | 契約書内の「原状回復義務」および「第三者への賃借権譲渡・転貸」に関する条項を精読する。 |
| 貸主(大家)への事前相談 | 居抜きでの売却・退去の意向を正式に伝え、内諾を得る。 |
| 造作譲渡の承諾書取得 | 貸主から、どの範囲の造作物を残置してよいか、条件を明記した「承諾書」を書面で取得する。 |
| リース契約の確認 | 設備・什器にリース品がないか、契約書をすべて確認する。ある場合は残債と契約名義を確認。 |
| 各種契約の洗い出し | 電気、ガス、水道、通信、警備、BGMなど、店舗に関わるすべての契約をリストアップする。 |
| 債務・未払いの確認 | 公租公課(固定資産税・償却資産税等)や各種利用料に未払いがないかを確認する。 |
| 専門業者による清掃 | 厨房全体、特にグリストラップ、換気ダクト、排水溝など、目に見えない箇所をプロに依頼し徹底洗浄する。 |
| 害虫駆除の実施・確認 | 必要に応じて専門業者による害虫駆除を実施し、保証書などを取得する。 |
| 清掃・駆除後の状態記録 | 専門業者による作業完了後の状態を写真・動画で記録しておく。 |

これまで解説してきた内容や前述したチェックリストを個人で完璧にこなすのは、多大な労力と専門知識を要するのであまり現実的ではありません。
ここで強力なパートナーとなるのが、店舗売却を専門に扱う仲介業者で、以下のようなメリットがあります。
このように、店舗売却業者に委託することで多くのメリットがありますが、レストラン、居酒屋、カフェ、バーなど、自身の業態に詳しい「飲食店特化型」の仲介業者に相談することをおすすめします。
居抜き物件は、売主にとっては投資回収とスムーズな撤退を、買主にとっては低コストでのスピーディな開業を可能にする、非常に合理的な取引形態です。
しかし、そのメリットを最大限に活かすためには、本記事で解説したような潜在的リスクに対する深い理解と、体系的な準備が不可欠です。
特に、
この3点は取引の成否を分ける最重要ポイントと言えます。
居抜き物件の売買は、運や偶然で成功するものではありません。正しい知識で武装し、必要であれば専門家の力を借りることが、後悔のない、満足のいく取引を実現するための唯一の方法です。
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