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【2025年最新】飲食店の造作譲渡契約とは|雛形やテンプレートの注意点・契約書の作り方を解説

投稿日:2025/11/08

飲食店の閉店や移転の伴い、退店方法の選択肢として必ず候補に出てくるのが「店舗の売却」。

この店舗売却の際に、極めて重要な役割を果たすのが「造作譲渡契約」です。

この契約一つで、売却価格が大きく変わるだけでなく、予期せぬ法務・税務上のトラブルに巻き込まれるリスクを回避できます。

本記事では、飲食店の造作譲渡契約について、その基礎知識から法的に有効な契約書の作り方、トラブルを未然に防ぐための注意点まで、専門的な観点から網羅的に解説します。

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造作譲渡契約とは?

店舗売却を成功に導くためには、まず「造作譲渡」と「居抜き」という基本用語の正確な理解が不可欠です。これらは同義で使われることもありますが、法的な意味合いは明確に異なります。

この違いを把握することで、あとで解説する契約プロセスにおける認識の齟齬を防ぎ、トラブルを回避することができます。

造作譲渡とは?飲食店で多いケースとよくある誤解

造作譲渡とは、店舗の内装や厨房設備、什器・備品といった事業用資産(造作)をまとめて買い手に引き渡す契約のことです。

店舗の賃借権そのものを譲渡する契約ではなく、あくまで設備や内装といった「物」の売買契約になります。

飲食店経営者の方が陥りやすい誤解として、「造作を譲渡すれば、店舗を借りる権利(賃借権)も自動的に引き継がれる」と思われがちですが、賃借権の承継には、必ず建物の所有者である貸主(オーナー)の承諾が別途必要となります。

居抜き物件との関係と、売却成功の鍵

造作譲渡VS居抜き物件の定義

「居抜き物件」とは、前述した造作が残されたままの状態の「物件そのもの」を指す言葉です。

そして、居抜き物件を売買する際の法的な手続き・契約行為が「造作譲渡契約」になります。

この複雑な権利関係と高額な取引を伴うプロセスを、経営者ご自身ですべてを行うには極めて困難です。

だからこそ、売却成功の鍵となるのが、売却計画の初期段階で、飲食店の店舗売買の専門家に相談することです。

専門家は、客観的な視点での造作価値の査定、法的に有効な契約書の作成、そして最も重要な貸主(オーナー)との交渉まで、一貫してサポートしてくれます。

貴重な資産である店舗を、より高く、より早く、そして安全に売却するための「最適な戦略」について話を聞いてみてはいかがでしょうか。

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造作譲渡契約書の雛形やテンプレートを活用する際の注意点

「テンプレで自分でやってみたら、貸主の承諾で止まった」「引渡し後に発生した機器トラブルに対応できなかった」など、店舗売却(居抜き・造作譲渡)はテンプレートや雛形を活用するだけでは安全に進みません。

テンプレートや雛形を活用する際に発生しやすいミスやトラブルを紹介します。ぜひチェックしてみてください。

テンプレートや雛形でよくあるミス

①貸主承諾・賃貸条件の不整合

無料の雛形では、造作譲渡契約の成立が「貸主による賃貸借契約の承諾」を前提とする「停止条件付契約」になっていないケースがあります。

万が一、貸主の承諾が得られない場合、先に支払った代金の返還交渉が難航するだけでなく、契約が白紙に戻るまでの時間的損失(空家賃の発生など)が甚大になる可能性も。

また、新賃借人(買い手)の賃料が想定より高く設定され、交渉が破談になるリスクもあります。

ただし、あえて停止条件付契約をつけていない場合もあるので、万が一、気になる方は仲介業者に相談してみましょう。

②譲渡対象の特定不足

テンプレートに添付されている目録が「冷蔵庫 一式」といった抽象的な記載だと、引渡し当日に「聞いていたものと違う」「備品が足りない」といったトラブルに直結します。

リース品ではないことを確認した上で、型番、数量、動作状況(不具合の有無)まで明記した「造作譲渡品目録」を契約書に添付するようにすると安心です。

記載が曖昧だと、最悪の場合、引渡し後の減額要求や損害賠償請求に発展する恐れもあるので注意しましょう。

③リース・所有権留保の見落とし

飲食店では、ビールサーバーや製氷機、POSレジなどが、リース・レンタル品であることが比較的多いです。

これらを自社の所有物と誤認して譲渡対象に含めてしまうと、契約そのものが成立しなくなってしまうケースも。

引渡し直前にリース会社からの指摘で発覚するケースも多く、買主との再交渉や代替品の購入費用が発生し、売却スケジュールが大幅に遅延する原因となります。

④契約不適合の扱いが旧式

2020年の民法改正により「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」へと変更されました。

古い雛形ではこの法改正が反映されておらず、「現状有姿(あるがままの状態)」と記載するだけで、引渡し後に隠れた不具合(例:給排気設備の深刻な詰まり、空調の基幹部品の故障など)が発覚した際の責任の所在が曖昧になりがちです。

責任を負う期間や範囲を明確に定義しないと、高額な修繕費用をどちらが負担するかで深刻な紛争となる可能性があるので注意しましょう。

⑤税務・印紙・電子締結の判断ミス

課税事業者の場合、造作譲渡の売買代金には消費税がかかります。

契約書に「税込」「税抜」の記載が漏れているだけで、取引額によっては、あとから数十万円単位の認識齟齬が生まれてしまうケースも。

また、紙の契約書には売買金額に応じた収入印紙の貼付が必要であり、それを怠ると過怠税の対象となってしまいます。

また、近年増えている電子契約の場合、印紙は不要ですが、法的に有効な電子署名サービスを利用しなければ契約の証拠力が問われるリスクもあります。

よくあるトラブルの例

①承諾待ちで2週間ストップ

テンプレで先に契約・入金した結果、貸主審査でNG。返金交渉に時間がかかり、再募集の広告費や仲介手数料が二重発生。内見調整の人件費、空家賃・原状維持費も上乗せ。結果、想定利益を食いつぶす“見えないコスト”に。

②リース機器の混在

リース満了前の製氷機を目録に入れてしまい名義移転不可。残債清算金の支払い、代替機の緊急レンタル費、撤去・搬出費が追加発生。再合意のための契約書差替えや立会いも必要となり、スケジュール遅延による人件費が膨張。

③引渡し後の排気不良

「現状有姿」だけで検査手順が未整備。引渡し後に排気不良が発覚し、ダクト改修・グリス清掃等の想定外工事費が発生。営業開始を遅らせた休業損失に加え、原因特定や過失割合争いのための専門業者調査費・弁護士相談費まで負担。

無料の雛形だけで進めると、貸主承諾待ちや目録漏れ、リース混在、検査不足などで返金交渉・追加工事・二重手数料が発生しがち。

先ずは最初に専門業者への無料相談などを活用し、手戻りと余計な費用をまとめて防ぎましょう。

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注意点とスムーズな進め方|失敗しない譲渡契約の方法

法的に不備のない契約書を作成するためには、失敗を防ぐための「守り」と、より有利な条件を引き出す「攻め」の2つのノウハウが必要となります。

ここでは、契約締結に至るまでの具体的な注意点と、売却プロセス全体をスムーズに進めるための方法を見ていきましょう。

事前に確認すべき3つのポイント(設備・リース・オーナー承諾)

契約交渉に入る前の準備を怠ると、交渉の最終段階で破談になる、あるいは契約後に深刻なトラブルに見舞われるリスクが高くなります。

そのため、買主を探し始める前に、以下の3点を必ず書面で確認し、整理しましょう。

①全設備の動作確認と資産リストの完成

譲渡対象となる厨房設備や空調、給排気設備などがすべて正常に動作するかを必ず確認しましょう。もし不具合がある場合は正直にリストへ記載し、修理費用を考慮した価格設定にするか、買主側で修繕する前提で交渉に臨むかの方針を固めておきましょう。

②リース契約・レンタル品の完全な洗い出し

店舗にある資産が、すべて自社の所有物とは限りません。製氷機、ビールサーバー、POSレジ、複合機などはリース契約やレンタル品であるケースが多いので、契約書を精査し、所有権が自社にないものはリストから完全に除外しましょう。

③貸主(オーナー)からの「書面による」承諾

最も重要かつ、すべての土台となるのが「貸主の承諾」です。口頭での許可だけではなく、新たな賃借人への賃貸借契約の切り替え(または承継)と、造作の売買を許可する旨は書面で承諾を取ることが望ましいです。

高く・早く譲渡するための店舗の魅せ方

同じスペックの物件であっても、少しの工夫で買主への印象は大きく変わり、査定額や売却スピードに直結します。

店舗を高く売却するには、まず徹底した清掃で「大切に使われてきた印象」を与えることが重要です。

さらに、厨房機器や空調設備のメンテナンス記録を提示し、設備の価値を客観的に示しましょう。

トラブル事例から学ぶ失敗回避のコツ

造作譲渡でよくあるトラブルの一つが、貸主の承諾を口頭で済ませてしまい、あとになって白紙になるケースです。

実際には「事業計画に合わない」などの理由で貸主が態度を変えることがあり、買主・売主の双方が大きな損失を被ってしまうケースも。

トラブルを避けるためには、新規契約者の業態や条件を明記した「承諾書」を書面で取得することが望ましいです。

売却までの流れと期間の目安

売却までの流れと期間の目安

造作譲渡は、思い立ってすぐに完了するものではなく、計画的に進めるために、全体の流れと必要期間を把握しておきましょう。

【売却までの標準的な6ステップ】

  1. 専門家への相談・物件査定
  2. 貸主への交渉・承諾書の取得
  3. 媒介契約の締結・買主の募集開始
  4. 内覧対応・買主との条件交渉
  5. 造作譲渡契約書・賃貸借契約書の締結
  6. 残代金の決済・店舗の引き渡し

ステップが多いため、店舗の引き渡しまでは、一般的に3ヶ月〜半年程度はかかります。人気物件でスムーズに進んだとしても、最低2ヶ月は見ておくと良いでしょう。

この複雑で時間を要するプロセスを、日々の店舗運営と並行して経営者ご自身で進めるのは、多大な労力と時間を要します。

「店舗売却ドットコム」では、お忙しい経営者様の煩雑な手続きを、代理人として一括でサポートしております。「何から始めればいいか分からない」という方のためにも無料相談を受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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本記事では、飲食店の造作譲渡契約について、基礎知識から契約書の作り方、そして失敗しないための実務的な注意点までを網羅的に解説しました。

最後に、重要なポイントを改めて確認しましょう。

  • 造作譲渡は「資産の売買契約」であり、居抜き物件を売買する際の法的な手続き・契約行為が「造作譲渡契約」である。
  • 契約書は専門家と共に作成し、「譲渡対象物の範囲」と「契約不適合責任」を明確に定める。
  • 契約前の「設備・リース・貸主承諾」の3点確認が、将来のトラブルを未然に防ぐ。
  • 高く・早く売るためには、清掃やメンテナンス記録の提示といった「店舗の魅せ方」が重要。

造作譲渡は、法務・税務・不動産の知識が複雑に絡み合う専門的な取引なので、信頼のおけるパートナーと一緒に進めることが成功の鍵です。それが、ご自身の貴重な資産を守り、その価値を最大化するための最善策となります。

「店舗売却ドットコム」では、1,600件を超える飲食店の売却支援実績があります。
居抜き売却を検討している方はもちろん、居抜き物件を探している方は、お気軽にご相談ください。

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株式会社Food Innovators Japan 取締役 今井康仁

監修者:今井 康仁(株式会社Food Innovators Japan 取締役)


飲食業界に20年以上携わり、現在はFood Innovators Japanで店舗売却支援や開業サポート、経営改善などに取り組んでいます。現場経験をもとに、事業者の皆さまに役立つ情報をお届けします。